「自動化したい」と思っても、最初の1つが決まらないのではないでしょうか。
私は清掃業の会社を経営しています。エンジニアではありません。それでも、経理の集計と予測を自動化して運用しています。
その経験から言うと、選び方を間違えると、作っても使わなくなります。
先に結論を書きます。
最初に自動化すべきは「面倒だからやらなくなっている作業」です。
時間がかかる作業ではありません。
この違いが、続くかどうかを分けました。
「削減時間」で選ぶと失敗する
業務効率化の記事を読むと、たいていこう書いてあります。
「時間がかかっている作業を洗い出し、削減効果の大きいものから着手しましょう」
正しそうに見えますが、この基準だけで選ぶと外します。
私が最初に自動化したのは、月末の着地予想の計算です。手作業でやると 10分程度 の作業でした。
月10分。年間で2時間です。削減効果で並べたら、優先順位はかなり下になります。
それでもこれを選んだ理由は、「10分が惜しくて、結局やっていなかった」からです。
本当の損失は「やらなかったこと」で起きている
拠点ごとの売上を集計して、日数で割って、月末まで伸ばす。やれば10分です。
でも、月の途中で「今月どうなるかな」と思っても、面倒なので確認しない。そして月末になって「思ったより悪かった」と気づく。
その時点では、もう打つ手がありません。
失っていたのは10分ではなく、「15日の時点で気づいて、残り半月で動くチャンス」でした。
自動化の効果を「削減できた時間」で測ると、この種の価値は見えません。測るべきは「やらなくなっていたことを、やるようになったか」です。
実際に組んだ仕組みの中身は、Googleスプレッドシートの売上から月末着地予想を自動計算しSlackに投稿する方法で公開しています。
効果が出る業務の3条件
私の判断基準はこの3つです。すべて満たすものから着手します。
① 繰り返し発生する
毎日・毎週・毎月など、周期がはっきりしていることが条件です。
一度きりの作業を自動化しても、作る時間のほうが長くなります。年12回以上が目安です。
② ルールが決まっていて、判断が要らない
「このセルの値を足して、日数で割る」のように、手順が確定しているもの。
途中で「これは例外だから別扱い」といった判断が入る業務は、自動化しても結局人が確認することになり、手間が減りません。
③ やらないと困るが、やっても価値が増えない
ここが最も重要です。
集計作業そのものは、誰がやっても同じ結果にしかなりません。時間をかけても価値は増えない。一方、やらないと判断ができない。
こういう「価値を生まないが必要な作業」こそ、機械に渡すべきものです。
逆に、時間をかけるほど質が上がる仕事(企画、交渉、採用の面談)は、自動化の対象ではありません。
自動化してはいけない業務
条件を裏返すと、避けるべきものが見えます。
| 対象 | 理由 |
|---|---|
| 年に数回しかない業務 | 作る手間のほうが大きい。しかも次に使うときには仕様を忘れている |
| 例外処理が多い業務 | 分岐を作り込むほど壊れやすくなり、保守できなくなる |
| 判断が必要な業務 | 最終的に人が確認するなら、自動化しても手間は減らない |
| 法令が絡む業務 | 制度変更に自分で追随し続ける必要がある。税務・給与計算などは専用ソフトに任せるべき |
| 担当者が他にいる業務 | 自分しかメンテできない仕組みを他人の業務に入れると、その人が困る |
特に4番目は重要です。
仕訳や決算、消費税の計算を自作しようとは、私はまったく思いません。法令は毎年変わり、間違えたときの責任は全部自分に来ます。
この線引きについては、経理はスプレッドシート自作と会計ソフト、どちらがいいかで詳しく整理しています。
最初の1つを選ぶ手順
実際にやるなら、この順序です。
Step 1:直近1ヶ月を振り返る
「やろうと思っていたのに、面倒でやらなかったこと」を3つ書き出します。
時間がかかった作業ではありません。やらなかった作業です。
Step 2:3条件で絞る
書き出した3つを、先ほどの条件で判定します。
- 繰り返し発生するか
- 判断が要らないか
- やっても価値が増えないか
すべて満たすものが1つあれば、それが最初の対象です。
Step 3:小さく作って、1回動かす
いきなり完璧を目指さないことです。
私の場合も、最初は集計して画面に出すだけでした。Slackへの通知は後から足し、定期実行はさらに後です。
⚠️ 「作った」と「動いている」は別物です。
私は定期実行を設定したつもりで、数ヶ月まったく動いていませんでした。手動では動くのに、自動実行だけ失敗していたのです。この失敗の詳細と対策は launchdが動かない・終了コード127の原因と対処 に書いています。自動化は「自動で1回動いたことを確認して」初めて完成です。
エンジニアでなくても始められる
プログラムを書ける必要はありません。私がやったのは、
- 「こういうことがしたい」とAIに説明する
- 出てきたコードを動かす
- エラーが出たら、その内容をそのまま伝える
この繰り返しだけです。
ただし、毎回ゼロから説明するのは非効率でした。前提条件をファイルに書いておくと、説明が1回で済みます。
その方法は CLAUDE.mdとは何か|AIへの指示をファイルで管理する で解説しています。
まとめ
- 削減時間の大きさで選ぶと外す。測るべきは「やらなくなっていたことを、やるようになったか」
- 効果が出るのは ①繰り返し発生し ②判断が要らず ③やっても価値が増えない 業務
- 年に数回・例外が多い・判断が必要・法令が絡む業務は自動化しない
- 最初の1つは「面倒でやらなくなっていた作業」から選ぶ
- 小さく作り、自動で1回動いたことを確認するまでは完成ではない
自動化の目的は、時間を浮かせることではありませんでした。判断に必要な材料が、放っておいても手元に来る状態を作ることでした。


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