AIに作業を頼むとき、毎回同じ前提を説明していませんか。
「このフォルダは経理用で」「データはスプレッドシートから取ってきていて」「このファイルは自動生成だから直接編集しないで」——私は最初、チャットのたびにこれを打ち込んでいました。
CLAUDE.md は、その説明を1回書いてファイルに置いておく仕組みです。AIが作業を始める前に自動で読むので、毎回説明する必要がなくなります。
この記事では、実際に運用しているファイルをそのまま公開しながら、何を書くと効くのかを解説します。
何が問題だったか
AIに作業を頼むとき、失敗のパターンは決まっていました。
| 失敗 | 原因 |
|---|---|
| 自動生成されるファイルを直接書き換えられた | それが自動生成だと知らない |
| データの命名規則を無視した処理を書かれた | 規則を伝えていない |
| 例外的な仕様を無視された | 例外の存在を知らない |
| 毎回、口調や出力形式が変わる | 指定していない |
どれも「知らなかったから」起きています。 AIが悪いのではなく、伝えていない自分の問題でした。
そして厄介なのは、一度説明しても、次の会話では忘れられていることです。会話が変われば前提はリセットされます。
CLAUDE.md の実例
実際に使っているファイルです。拠点名だけ伏せて、そのまま載せます。
# CLAUDE.md
このフォルダは経理・管理業務を行うためのワークスペースです。
## 概要
- 5拠点(拠点A・拠点B・拠点C・拠点D・拠点E)の売上/利益を管理する。
- 元データは Google スプレッドシートで管理し、xlsx として取得して集計・予測する。
- 回答は日本語・簡潔に。
## ディレクトリ構成
- `経理/` — 経理関連の本体
- `predict.py` — 利益表から「月末着地予想」を日割り(ランレート)で算出
- `sync.sh` — Google スプレッドシートの最新版を xlsx でダウンロードして上書き
- `run_prediction.sh` — `sync.sh` → `predict.py` を実行し、結果保存+通知(毎月15日 launchd 起動)
- `利益表.xlsx` / `売上帳.xlsx` — スプレッドシートから同期したデータ(自動生成・直接編集しない)
- `着地予想_YYYY-MM.txt` — 予測レポート出力
- `実行ログ.txt` — 実行履歴
## よく使うコマンド
```bash
cd 経理
./sync.sh # 最新データを取得
python3 predict.py # 当月の着地予想
python3 predict.py 6 # 月を指定(例: 6月)
./run_prediction.sh # 同期→予測→保存→通知 を一括実行
```
## 注意点
- `利益表.xlsx` / `売上帳.xlsx` は同期で上書きされるため、手作業で編集しない。
修正は Google スプレッドシート側で行う。
- シート名は「`<月>月<拠点>`」形式(例: `6月拠点A`)。
表記ゆれ(スペース)は `predict.py` 側で吸収している。
- 拠点Eのみ売上ラベルが「売上」、他拠点は「清掃売上」。
- 集計ロジックや拠点を変更する際は `predict.py` の `LOCS` と各ラベル定義を確認する。
たったこれだけです。30行程度。
4つのセクションの役割
① 概要 — 「ここは何の場所か」
最初の3行で、このフォルダが何のためのものかを伝えます。
回答は日本語・簡潔に のような出力の好みもここに書けます。毎回「簡潔に」と打つ必要がなくなります。
② ディレクトリ構成 — 「どのファイルが何か」
各ファイルの役割を1行で書きます。
ここで重要なのは、(自動生成・直接編集しない) のような但し書きです。ファイル名だけでは、それが手作りなのか自動生成なのか判別できません。
③ よく使うコマンド — 「どう動かすか」
コピペで動く形で書いておきます。
副次効果として、自分が久しぶりに触るときの備忘録になります。3ヶ月後の自分は、コマンドを覚えていません。
④ 注意点 — ここが最も効く
後述しますが、このセクションだけで価値の半分以上があります。
「注意点」が効く理由
注意点セクションは、AIがやりがちなミスを先回りして防ぐ場所です。
実例を3つ挙げます。
例1:自動生成ファイルの保護
利益表.xlsxは同期で上書きされるため、手作業で編集しない。修正はスプレッドシート側で行う。
これを書かないと、AIは親切心で xlsx を直接修正します。そして次回の同期でその修正は消えます。
例2:命名規則の共有
シート名は「
<月>月<拠点>」形式。表記ゆれ(スペース)はpredict.py側で吸収している。
規則を書いておくと、新しい処理を書くときも同じ規則に従ってくれます。さらに「表記ゆれは吸収済み」と書いておけば、同じ対策を二重に実装されずに済みます。
例3:例外の明示
拠点Eのみ売上ラベルが「売上」、他拠点は「清掃売上」。
実務のデータには必ず例外があります。 統一すべきなのは分かっていても、過去分まで直すのは現実的ではありません。
こういう「きれいでない事実」こそ書く価値があります。書かなければ、AIは全拠点が同じ形式だと仮定して処理を書き、そして失敗します。
💡 注意点セクションに書くべきは「一度失敗したこと」です。
最初から完璧に書こうとせず、AIが間違えるたびに1行ずつ足していくのが実際の運用です。
CLAUDE.md と AGENTS.md を両方置く
私は同じ内容のファイルを2つ置いています。
| ファイル | 読むツール |
|---|---|
CLAUDE.md |
Claude Code |
AGENTS.md |
他のAIコーディングツール |
AIツールによって、読みに行くファイル名が違います。 片方しか置いていないと、別のツールを使ったときに何も参照されません。
内容はほぼ同一で構いません。中身を書くコストはすでに払っているので、コピーして名前を変えるだけです。ツールを乗り換えたり併用したりする可能性があるなら、両方置いておくのが安全です。
書くべきこと・書かなくていいこと
| 書く | 書かない |
|---|---|
| 自動生成ファイルの識別 | コードを読めば分かること |
| データの命名規則 | 一般的なプログラミング知識 |
| 例外的な仕様 | 一度きりの作業指示 |
| よく使うコマンド | 長大な仕様書 |
| 出力の好み(言語・簡潔さ) | 機密情報・認証情報 |
「コードを読めば分かること」は書かなくて構いません。 AIはコードを読めます。
書くべきは、コードを読んでも分からないことです。「なぜそうなっているか」「触ってはいけないもの」「例外」——このあたりが該当します。
⚠️ APIキー・パスワード・Webhook URLは絶対に書かないでください。 これらは別ファイルに分離し、
.gitignoreなどで管理します。
運用の実際
最初から完成させる必要はありません。私の場合はこうなりました。
- 最初は概要3行だけ書いた
- AIが xlsx を直接編集した → 注意点に1行追加
- シート名の揺れで処理が止まった → 1行追加
- 拠点ごとのラベル差で失敗した → 1行追加
失敗するたびに1行増える、という育て方です。これで30行になりました。
そしてこの30行は、そのまま引き継ぎ資料になります。人が増えたときも、この1ファイルを読めば前提が伝わります。AIのために書いたものが、結果的に人にも効きました。
まとめ
CLAUDE.mdはAIへの前提説明を1回で済ませるためのファイル- 構成は概要・ディレクトリ・コマンド・注意点の4つで足りる
- 最も効くのは「注意点」。自動生成ファイル・命名規則・例外を書く
- 書くべきはコードを読んでも分からないこと
CLAUDE.mdとAGENTS.mdを両方置くとツールを変えても効く- 最初から完璧を目指さず、失敗するたびに1行足す
30行のファイル1つで、毎回の説明がなくなります。AIを業務で使うなら、最初に作るべきファイルだと思っています。
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