「AIで社内の作業を自動化したい」と考えたとき、最初にやるべきなのはプログラミングの勉強ではありません。
私は清掃業の会社を経営しています。コードは書けません。それでも経理の集計と予測を自動化し、毎月自動で動かしています。
ただし、始めた当初は2週間ほど何も進みませんでした。原因は、自分のパソコンの状態をAIに伝えていなかったことでした。
最初にやるべきことは、「自分のパソコンで何ができて、何ができないか」を1度調べて、それをファイルに書き残すことです。
なぜ最初につまずくのか
AIに「これを自動化して」と頼むと、コードはすぐに出てきます。問題は、そのコードが動かないことです。
AIは「一般的なパソコンならこうなっているはず」という前提で答えます。ところが実際のパソコンは、その前提から少しずつずれています。
私のMacで実際に起きたのは、こういうことでした。
- AIが「python3 で実行してください」と案内する
- 実行するとエラーになる
- エラーを貼ると、別の直し方が出てくる
- それも動かない
これを何往復もしました。原因は、開発用の部品(Xcodeコマンドラインツール)が入っていないため、標準のPythonが動かない状態だったことです。
AIはそれを知りません。知らないまま、動くはずの答えを出し続けます。
Step 1:できないことを1回だけ調べる
最初に30分だけ使って、自分のパソコンの状態を確認します。この30分で、あとの何十時間かが決まります。
AIにこう頼めば、確認用のコマンドを出してくれます。
「私のMacで何が使えるか確認したいです。Python・Node.js・gitなどが入っているかを調べるコマンドを、1つずつ順番に教えてください。エラーが出たらそのまま貼ります」
大事なのは、エラーを隠さずそのまま渡すことです。エラー文は失敗の証拠ではなく、状態を教えてくれる情報です。
私の場合、この確認で次のことが分かりました。
| 項目 | 状態 |
|---|---|
| 標準のPython | 動かない(開発用の部品が未導入のため) |
| Node.js | 標準の場所ではなく、別の場所に入っている |
| git | 入っていない |
この3行を先に知っているかどうかで、会話の質がまったく変わりました。
Step 2:分かったことをファイルに書く
調べた結果は、毎回説明し直すのではなく、ファイルに書いておきます。
AIは会話が変わると前回の内容を忘れます。しかし決まった名前のファイルに書いておけば、毎回それを読んでから答えてくれます。
私が書いているのは、たとえばこういう内容です。
・このパソコンには開発用の部品が入っていない。標準のPythonは動かない
・Pythonは別に用意したものを使う(場所はここ)
・gitは使えない
・返答は日本語で。専門用語をそのまま出さない
これを書いてから、「動きません」の往復がほぼ消えました。
このファイルの作り方は CLAUDE.mdとは何か|AIへの指示をファイルで管理する で詳しく解説しています。
Step 3:いちばん小さいものを1つだけ動かす
環境が分かったら、次は成果の小さいものを1つ選んで、最後まで動かします。
私が最初にやったのは、「表計算ファイルを読んで、合計を画面に出すだけ」でした。通知もなし、定期実行もなし。それだけです。
意味がないように見えますが、これには理由があります。
小さく1つ通しておくと、「どこまでは確実に動く」という基準ができます。
次に何かが動かなくなったとき、この基準があると原因の範囲がすぐ絞れます。
逆に、いきなり通知や定期実行まで作り込むと、動かなかったときにどこが悪いのか分からなくなります。
やらなくていいこと
始める前に必要だと思っていたものの、実際にはまったく要らなかったものを挙げます。
| 要らなかったもの | 理由 |
|---|---|
| プログラミングの勉強 | コードは読めなくても運用できる。必要なのは「何がしたいか」を言葉にする力 |
| 開発環境の完全な構築 | 使うものだけ、必要になったときに入れれば足りる |
| 高いパソコン | 集計と通知程度なら、今使っているMacで動く |
| 完璧な設計 | 先に全体を設計しても、動かしてみると前提が変わる |
逆に必要だったのは、「動かなかったときに、状況をそのまま伝える習慣」だけでした。
この順番を守る理由
環境の確認を後回しにすると、どこで失敗しているのかが分からなくなります。
「コードが間違っているのか」「パソコンの設定なのか」「頼み方が悪いのか」が切り分けられず、やる気だけが削られていきます。
私が2週間止まったのは、まさにこれでした。先に環境を1回調べておけば、初日で終わっていた話です。
環境が整ったら、次は「どの業務から手をつけるか」です。選び方は 業務自動化はどこから手をつけるか|効果が出る業務・出ない業務の見分け方 にまとめています。
まとめ
- 最初にやるのは勉強ではなく、自分のパソコンの状態を1回調べること
- AIは一般的な環境を前提に答えるので、ずれていると延々かみ合わない
- 調べた結果はファイルに書いて、毎回読ませる
- 最初の1本は成果が小さいものを、最後まで通す
- プログラミングの勉強も、完璧な設計も要らない
自動化で本当に必要だったのは技術力ではなく、前提を書き出して共有するという、ごく普通の段取りでした。


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