経理はスプレッドシート自作と会計ソフト、どちらがいいか

経理はスプレッドシート自作と会計ソフト、どちらがいいか 経理・数字の自動化

スプレッドシートで売上を管理していると、必ず一度は考えます。「会計ソフトを入れるべきなのか」と。

私は清掃業の会社を経営していて、日次の売上・利益をスプレッドシートで管理し、そこから月末の着地予想を自動計算する仕組みをPythonで自作しました。エンジニアではありません。

その経験から言うと、この2つは対立するものではありませんでした。境界線があります。

先に結論を書きます。

「決められた形式で出す」業務は会計ソフト。
「自社独自の見方をする」業務は自作。

この線引きを間違えると、どちらを選んでも後悔します。


自作でやっていること

まず、実際に自作した範囲を具体的に書きます。

処理 内容
データ取得 Googleスプレッドシートの売上帳をxlsx形式で自動ダウンロード
集計 拠点別に累計売上・累計利益を算出
予測 入力済み日数から月末の着地をランレートで計算
出力 レポートをテキストで保存
通知 Slackとデスクトップ通知に配信
実行 毎月決まった日に自動実行

コードの量は Pythonで66行、シェルスクリプトが2本。それだけです。

自作した理由は「予測」

集計だけなら、正直わざわざ作る必要はありませんでした。スプレッドシートの関数でも足りますし、会計ソフトを入れれば自動です。

作った理由は、「今月このままいくとどこに着地するか」を知りたかったからです。

会計ソフトが出してくれるのは、基本的にもう起きたことです。試算表も月次推移も、確定した数字。でも経営で欲しいのは「これからどうなるか」でした。

月末に「思ったより悪かった」と分かっても、その月についてはもう何もできません。15日の時点で分かっていれば、残り半月で動けます。

この「拠点別・入力日数ベースのランレート予測」は、一般的な会計ソフトの標準帳票とは異なる、自社固有の計算条件です。 そのため、会計ソフトで記帳と申告の土台を整え、独自の予測だけをスプレッドシートやPythonで補う形が現実的でした。


自作の限界(正直に書きます)

自作を勧める記事に見えるかもしれないので、先に限界を全部書きます。

① 仕訳・決算・申告はできない

これは決定的です。私が作ったのは「数字を見るための道具」であって、帳簿ではありません。

仕訳、消費税の計算、決算書の作成、電子帳簿保存法への対応——このあたりを自作でやろうとは、まったく思いません。法令が変わるたびに自分で追随する必要があり、間違えたときの責任は全部自分に来ます。

② 属人化する

書いた本人しかメンテナンスできません。

私が体調を崩したら、その仕組みは誰も直せません。会計ソフトなら、担当者が変わっても引き継げます。この差は、会社が大きくなるほど効いてきます。

③ 止まっても気づかない

実際にやらかしました。

設定した自動実行が、数ヶ月間まったく動いていませんでした。 しかも気づいたのは、たまたま別の用事でログを開いたときです。

通知が来れば気づきますが、来なければ何も起きません。「何も起きないこと」は意識に上らないのです。会計ソフトが止まればサポートに連絡できますが、自作は自分で気づいて自分で直すしかありません。

④ 「無料」ではない

サーバー代はかかりませんが、作る時間と、直す時間がかかります。時給換算したら、会計ソフトの月額より高い可能性は十分あります。


会計ソフトにしかできないこと

領域 理由
仕訳・記帳 会計基準に沿った処理。自作は現実的でない
決算書の作成 法定の様式が必要
確定申告・法人税申告 様式・計算ロジックが毎年変わる
消費税・インボイス対応 制度変更への追随が必須
電子帳簿保存法 保存要件を満たす必要がある
銀行・カードの自動連携 API連携の実装・保守が重い
税理士との連携 相手が同じソフトを見られる

特に最後の「税理士が同じ画面を見られる」は、自作では絶対に代替できません。


判断基準:どちらを選ぶか

状況 選択
帳簿・申告をきちんと回したい 会計ソフト
税理士と連携している/したい 会計ソフト
担当者が変わる可能性がある 会計ソフト
自社固有の指標を見たい 自作
予測・シミュレーションをしたい 自作
既存のスプレッドシート運用を活かしたい 自作

現実解は「併用」

私の場合、帳簿は帳簿として持ち、その横で自作の予測を回す形が結論でした。

会計ソフトのデータを自作側に取り込んで分析する、という使い方もできます。対立させる必要はありません。

むしろ、会計ソフトで日次のデータが整っているほうが、自作の予測精度は上がります。私の場合はスプレッドシートへの手入力が前提なので、入力が遅れている拠点があると予測が歪みます。


会計ソフトを選ぶなら

候補を絞るときは、広告の報酬額ではなく、自社の経理の流れに合うかで比較します。以下は2026年8月24日に各社の公式サイトで確認した内容です。

確認項目 弥生会計 Next マネーフォワード クラウド会計
対象 法人向けクラウド会計 ひとり法人・中小企業向けクラウド会計
無料体験 あり。終了後に自動請求されない 1か月。終了後に自動課金されない
金融機関連携 銀行・カード等の明細を自動取得。2,500以上のサービスと連携(公式サイト記載) 2,300以上の金融関連サービスと連携(公式サイト記載)
確認したい点 自社の勘定科目、部門管理、サポートの範囲 必要なバックオフィス機能、プランごとの制限、仕訳数

両社とも金融機関連携があるため、「銀行連携なら一方」と決めつけることはできません。 無料体験に同じダミー取引を入れて、①入力のしやすさ、②部門別に見られるか、③税理士と共有しやすいか、④料金に含まれる機能、の4点で比べるのが確実です。

会計ソフトを検討している方へ

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当サイト運営者は、現在この製品を日常業務で常用していません。使用感は無料体験でご確認ください。

📌 私自身は現在スプレッドシート+自作で運用しており、上記2製品を業務で常用しているわけではありません。製品の細かい使用感については、実際に無料体験で確認してください。 本記事は「自作でどこまでやれるか/どこから先はやるべきでないか」の判断材料として書いています。


まとめ

  • 境界線は「決められた形式で出す」か「自社独自の見方をする」か
  • 仕訳・決算・申告・法令対応は会計ソフトの領域。自作すべきでない
  • 自社固有の指標・予測・シミュレーションは自作の領域。会計ソフトには標準機能がない
  • 自作の限界は属人化・保守負担・止まっても気づかないことの3つ
  • 併用が現実解。会計ソフトでデータが整うほど、自作の予測精度は上がる

私が自作したのは66行のPythonです。「会計ソフトの代わり」を作ろうとしたのではなく、「会計ソフトにない機能」を作ったにすぎません。

その線引きさえ間違えなければ、自作は十分に費用対効果が合います。

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