経理の集計を自動化して、実際に何時間浮いたのか。正直に数えてみました。
私は清掃業の会社を経営しています。拠点がいくつかあり、拠点別の売上と経費を月次で集計しています。エンジニアはいません。
先に結論を書きます。
浮いた時間は、月に3時間ほどでした。
期待していたほどではありません。それでも自動化してよかったと言えるのは、時間以外のところで効果が出たからです。
※本記事の数値は、実際の作業構成をもとにした説明用の概算です。金額は含みません。
自動化する前にやっていた作業
月次でやっていたのは、次の作業です。
| 作業 | 頻度 | 1回あたり | 月合計 |
|---|---|---|---|
| スプレッドシートのダウンロード | 月4回 | 2分 | 8分 |
| 拠点ごとの数字の転記 | 月1回 | 40分 | 40分 |
| 月末着地の計算 | 月2回 | 10分 | 20分 |
| 集計結果の共有(貼り付け・送信) | 月2回 | 10分 | 20分 |
| 数字が合わないときの確認 | 月1回 | 60分 | 60分 |
| 合計 | 約2時間30分 | ||
数えてみて意外だったのは、いちばん時間を食っていたのが「数字が合わないときの確認」だったことです。集計そのものではありませんでした。
自動化したあと
取り込み・集計・着地の計算・チャットへの通知までを、決まった時刻に自動で動くようにしました。
| 作業 | 自動化後 |
|---|---|
| ダウンロード | 0分 |
| 転記 | 0分 |
| 着地の計算 | 0分 |
| 共有 | 0分(自動でチャットに届く) |
| 数字が合わないときの確認 | 約30分(残る) |
| 結果を眺めて判断する | 約10分(新しく増えた) |
差し引きで、月に約1時間50分。年間で22時間ほどです。
ここに、月末に自分で計算していた回数が増えたぶんを足しても、月3時間には届きません。
「確認」の時間は消えない
ここが、自動化を検討している方にいちばん伝えたい点です。
数字が合わないときの確認作業は、自動化しても半分しか減りませんでした。
減ったのは「どこがずれているか探す」部分です。プログラムが拠点ごとの数字を並べて出すので、ずれている場所はすぐ分かります。
しかし、なぜずれたのかを調べる作業は残ります。 入力漏れなのか、二重計上なのか、そもそも仕訳の考え方が違うのか。これは人が現物に当たるしかありません。
自動化で減るのは「探す時間」であって、「考える時間」ではありませんでした。
時間より大きかった効果
では、なぜ自動化してよかったと言えるのか。回数が増えたからです。
自動化する前、月末着地を計算していたのは月に1〜2回でした。10分の作業ですが、忙しいと後回しになります。
今は、頼まなくても決まった時刻に届きます。 見る回数が増え、月の途中で「今月は厳しい」と気づけるようになりました。
| 自動化前 | 自動化後 | |
|---|---|---|
| 着地を確認する回数 | 月1〜2回 | 頼まなくても届く |
| 気づくタイミング | 月末 | 月の途中 |
| 打てる手 | ほぼ無い | 残り期間で動ける |
浮いた22時間より、この差のほうが経営上は大きいと感じています。
この「時間で測ると効果を見誤る」という話は、業務自動化はどこから手をつけるか|効果が出る業務・出ない業務の見分け方 で詳しく書いています。
自作で浮く時間には上限がある
ここまでが自作の効果ですが、正直に書いておくべきことがあります。
私が自動化したのは「集計と予測」だけです。次の作業には一切手を出していません。
- 仕訳の入力
- 銀行明細やカード明細の取り込み
- 消費税や決算の計算
- 給与計算
これらを自作しようとは思いません。 理由は3つです。
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 法令が毎年変わる | 税率や様式の改定に、自分で追随し続ける必要がある |
| 間違えた責任が全部来る | 申告の誤りは自社の責任。時間を浮かせて追徴では意味がない |
| すでに安く売っている | 銀行連携や仕訳の自動化は、月額数千円のソフトに入っている |
仕訳や明細取り込みまで含めれば、浮く時間は月3時間どころではありません。ただしそこは、自作ではなく会計ソフトの領分です。
自作と会計ソフトの線引きは、経理はスプレッドシート自作と会計ソフト、どちらがいいか に整理しました。
これから自動化する方へ
削減時間を根拠に上司や自分を説得しようとすると、たいてい数字が足りません。
月2時間の削減では、投資判断として弱い。私も最初は「これだけか」と思いました。
そのうえで、判断材料としてはこちらを見てください。
「今まで見られていなかった数字が、見られるようになるか」
これが変わるなら、削減時間が小さくても価値があります。逆に、もともと毎日見ている数字を自動化しても、効果は削減時間のぶんしかありません。
まとめ
- 集計の自動化で浮いたのは月2〜3時間、年22時間ほど。期待ほど大きくない
- 「探す時間」は減るが「考える時間」は残る。差異の原因調査は人の仕事
- 本当の効果は確認の回数が増え、月の途中で気づけるようになったこと
- 仕訳・明細取り込み・税金の計算は自作しない。法令が変わり、責任が自社に来る
- その範囲は会計ソフトのほうが安く、確実
自作の役割は、経理を全部引き受けることではありませんでした。ソフトが出してくれない「自社独自の見方」を作るところにあります。


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